ナンバリングタイトルとしては6年ぶりの新作となる本作は,SRPGとしての完成度を高めつつ,「魔心エディット」による自動戦闘,イベントなどの演出を早く進められる「倍速モード」など,これまで以上に快適にプレイできる要素が盛り込まれている。
原田たけひと氏のキャラクターを違和感なく3D化し,「ディスガイア」の醍醐味である超インフレ化したレベルやダメージなどをゲームスタートの段階で味わえるなど,シリーズの特徴を残しつつ進化を遂げた内容にも注目だ。
発売を前に,日本一ソフトウェアの代表取締役社長である新川宗平氏と,本作のディレクターである小見山良毅氏に,本作の目指したところやポイントを聞いた。
従来のファンも新鮮に楽しめる新たなディスガイアを目指して
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。1月28日に「ディスガイア6」が発売となりますが,これまでのシリーズ作と比べて,ずいぶん久しぶりの新作な印象があります。
確かにいつの間にか「ディスガイア5」から6年が経過していました。我々としては,そんなに時間が経っているとは思っていなかったんですよ。ディスガイア5のSwitch版をローンチで発売し,「ディスガイアRPG」の開発にも携わって,そこからようやくディスガイア6という流れだったので,常にディスガイアを作り続けています。
4Gamer:
ディスガイア6を作るというお話は,ずいぶん前から新川さんがオープンにされていましたよね。私は,日本一さんと普段やり取りをしていて,どんな新作にするのかで長い議論をしている,と聞いていたので,発表を楽しみにしていました。
新川氏:
そうですね,かなり議論をしました。
ディスガイアは,シリーズごとにいろいろな変化を加えてきましたが,根本的な部分は基本的に一緒です。そこを変えないことには飽きられてしまうのではないか,シリーズが終わってしまうのではないかという気持ちがあって,ずいぶん悩みました。ナンバリング以外にも,「ディスガイアD2」や移植などがたくさん出ていますし。
4Gamer:
新ハードが出るたびに,とりあえず何かしらのディスガイアは遊べている気がしますね。
新川氏:
ですから,ディスガイア6は従来のプレイヤーの方にも新鮮な気持ちで遊んでいただけるものでないとダメだと考えました。
そこで本作の3本柱として定めたのが,見た目,遊びごたえ,遊びやすさです。
見た目については,「ディスガイア4」のときに高解像度アニメーションを採用して,従来のドット絵から見た目をずいぶん変えることに成功しましたが,これからPlayStation 5のような新ハードに代替わりするにあたって,2Dのアニメーションでは表現の限界を感じたんです。
もちろん2Dの良さは我々も分かっていて,ディスガイアRPGではそちらを採用しました。しかし,大画面の環境でプレイする機会の多いコンシューマ機では,2Dだとキャラクターを拡大して表示できない,360度回しての演出ができないなど,制限が多くなってしまいます。そこが“飽き”につながってしまうように思えて,グラフィックスを3Dに変更することに決めました。
4Gamer:
これまではずっと2Dにこだわっていたので,3Dが採用されたのは驚きました。ディスガイア4では,従来のドット絵と高解像度版の両対応なんてことをやっていたくらいですし。
新川氏:
どこかで踏み切らないと変わらないですから。遊びごたえの部分だけ変えるよりは,見た目から変えたほうが分かりやすいかなと思ったんです。
4Gamer:
3Dになりつつも,原田さん(原田たけひと氏)のキャラクターはうまく表現されていますね。
新川氏:
3D化にあたって,そこが大前提でした。企画自体,それができるかどうかの検証から始めたぐらいです。2Dでやるにしても3Dでやるにしても,「原田たけひとの絵が好き」という人はたくさんいるので,それを再現することに最も力を入れています。
4Gamer:
ディスガイア=原田さんの絵,というのがありますからね。
3D化にあたって,大変なところはどこでしたか?
小見山良毅氏(以下,小見山氏):
もともとの2Dから,原田さんの絵のイメージを崩さないように実装していくことが大変でした。3Dのシェーダをちょっと変えるだけで,見た目が全然違ってしまって。
それと,キャラクターに影を落とすか否かも課題でしたね。2D絵っぽく見せるなら必要ないですし,リアルにするならあったほうがいいですし……。最終的には「原田さんの絵を再現する」というところからブレないバランスで調整しています。
「時間がかかる」「面倒くさそう」といった先入観を払拭する
4Gamer:
本作で新たな遊びごたえを模索するにあたって,どこにポイントを置いたのでしょうか。
新川氏:
ポイントとしては,ディスガイアシリーズのファンの方々が,これまで何度もゲームで同じ作業を繰り返してきたことで,飽きが来ているのではないかと考え,それを払拭することを目指しています。
それともう1つ,ディスガイアを買ってくれない人達が,「なぜ買ってくれないのか」というところに着目しました。アンケートやネットの書き込みなどからリサーチをしてみると,どうやら「時間がかかる」「面倒くさそう」という声が多く,そうした先入観を取っ払うことも目標にしています。
4Gamer:
誤解されている部分もありそうですね。ディスガイアシリーズは,やり込もうと思えば膨大な時間やり込めますけど,SRPGとして物語を楽しむぶんには,それほど大変なものではないですから。
新川氏:
実際,過去のディスガイアのシリーズで,レベル9999とか1兆ダメージという数値に至っている,ゲームをしゃぶり尽くしてくれた人達は,購入者の10%にも満たないのではないかと思います。
残りの90%の人達は,そこまで遊ぶのは面倒くさいと思ってしまい,ディスガイアの代名詞になっている凄い桁のレベルやダメージを体験できないまま終わってしまっているかもしれません。それは申し訳ないという気持ちが浮かんだんですよね。
4Gamer:
数字のインフレ自体,クリア後からの要素ですからね。確かに「ディスガイアへのイメージ」と「実際の体験」がズレている人は多いのかもしれません。
新川氏:
そこでディスガイア6では,ストーリーをクリアするところまで進めるだけで,結構なレベルになって,結構なダメージが味わえるように変えました。
これまではクリアまでに到達するレベルが100とか200だったのを,数千というところまで引き上げています。それによってほかのRPGでは体験できないようなレベルの上がり方が味わえて,それに伴いダメージの桁も突き抜けます。
4Gamer:
インタビュー前に少しプレイさせていただきましたが,レベル1からHPが5桁あって,いきなりぶっ飛んでいるなと(笑)。ダメージの桁も上がっていますよね?
新川氏:
9999京9999兆……まで行きます。もともとはここまで数字をインフレさせるつもりはなかったんですけど,彼ら(小見山氏を指さして)が「上げちゃいました」とか言い出して。めっちゃアホなんですけど,それで“ディスガイアらしさ”が体験いただけるなら,そのほうがいいかなって。
シリーズのファンからは「また馬鹿やってるな(笑)」と思われるでしょうし,初めての人からは「何この馬鹿なゲーム!?」と思ってもらえるのではないでしょうか。
4Gamer:
大きな新要素として自動戦闘がありますが,これも面倒と思われている部分の軽減のために導入したものですか?
新川氏:
はい。お客さんに限られた時間の中で遊んでもらうために,やり込みをサポートできるよう導入しました。
きっかけとなったのは,買い切り型アプリとして配信中の「魔界戦記ディスガイアRefine」です。スマホアプリなので自動戦闘は必須と思い実装したところ,これが非常に快適で。ディスガイア6も周回プレイを想定したゲームなので,これは導入すればファンの方にも喜んでもらえるのではないかと。
4Gamer:
具体的にはどんなことができるんでしょうか。
「魔心エディット」といって,事前にキャラクターごとの行動をセットすることで,戦闘時に自動で戦ってくれるシステムです。敵が近くにいるときに攻撃したり,アイテムを使ったり,味方を持ち上げたりといった,プレイヤーがやれることを基本的にすべてセットできるので,それらをうまく組み合わせることで,思うがままに行動させられる仕組みです。
4Gamer:
というと,オートでステージクリアみたいな使い方を想定しているのでしょうか。それとも,周回の補助に使うような感じですか?
小見山氏:
どちらも可能です。ストーリーを進めるときは,あえて自動戦闘で進める遊び方もできますし,例えば「1ターン目だけ自動にして全キャラを出撃させた後,手動に切り替えて遊ぶ」みたいな,快適なプレイの補助としても使えます。
周回の補助としては,敵の配置に合わせて行動を用意し,1ターンで即クリアして,自動で同じステージに再度出撃して周回させるみたいなこともできます。
4Gamer:
自動周回も対応してくれるんですか!? では「練武」(シリーズ恒例のレベル上げステージ)で「魔拳ビッグバン」(これまた恒例の,レベル上げに有効な広範囲攻撃)をぶっ放して,一発で全員即死させる周回を繰り返す,みたいなことも自動でできるんですよね。
小見山氏:
はい,できます。
4Gamer:
つまり,放置でレベル上げが可能……?
小見山氏:
できますね。もちろん,それをやるには一発で倒し切るだけのキャラクター育成が必要なので,自動周回を成立させるための下準備はしないといけません。ですから,キャラクター育成自体は,従来のシリーズ同様,じっくり楽しめます。
4Gamer:
では,同じステージをひたすら周回するとか,単純な作業になる部分を楽にできるというイメージでしょうか。
小見山氏:
もちろん,そういう使い方も可能です。さらに「魔心エディット」を掘り下げていくと,ちゃんと行動を組んであげれば,ランダム生成の「アイテム界」に自動で潜らせることも可能になります。これはめちゃくちゃ便利ですよ。
4Gamer:
アイテム界まで対応するんですか。勝手に潜って戦って,アイテムを回収して帰ってくるみたいな?
小見山氏:
ひたすら奥を目指すのはもちろん,イノセント(倒すとアイテムが強化される敵)や宝箱があれば優先的に確保しにいくとか,一定の階層まで行ったらアイテムを使って脱出するとか,そういった動きをすべて自動化できます。
新川氏:
最初は自動化するための設定が大変に感じるかもしれませんが,いくつかサンプルを用意しているので,まずはそれを使ってみて,理解ができてきたら少しずつカスタマイズしていただくのがいいと思います。
4Gamer:
そこまでの自動化が可能となると,遊び方がまるっきり変わりますよね。今まで必死で探していたレアアイテムも,放っておいたら所持しているかもしれないわけですし。
自動戦闘の仕組みは,ディスガイア6の企画時から入れる予定だったんですか?
小見山氏:
そうですが,企画の最初の頃は,あらかじめ用意されたパターンでの自動戦闘という案でした。ただ,それだと思ったように動いてくれず,ストレスになってしまうこともあったんです。それなら,いっそ全部自分で組めるようにしてしまえば面白いのではないかと,今の形になりました。
4Gamer:
その,一見めちゃくちゃで突き抜けた感じ,ディスガイアらしいですね(笑)。
新川氏:
極端な話ですけど,PS4で自動化して周回しながら,Switchで別のゲームで遊ぶみたいなこともできます。もし競合しているタイトルがあったとしても,安心してディスガイア6を買ってください。長く遊んでいただくことを前提に作っているので,「面倒くさい」とか「時間がかかる」なんて,もう言わせません(笑)。
我々としても,魔心エディットの仕組みは手応えを感じていますので,触っていただいたらぜひ感想をお寄せください。次のディスガイアではどうするかを考えますので。
初心者でもプレイしやすいよう,チュートリアルもすべて見直し
新川氏:
本作は初心者の方でも遊びやすいよう,「初めての方も安心して入ってきていただけます」という仕掛けはたくさん入れています。
小見山氏:
チュートリアルもかなり充実させましたからね。
4Gamer:
日本一さんのゲームは,チュートリアルも毎回丁寧に作り込んでいる印象がありますが,今回はさらに配慮されているんですか?
新川氏:
初心者に触ってもらうことを強く意識すると,我々にとって常識だったことが非常識だったと気が付いたんです。本作の開発時に,ディスガイア5のチュートリアルをベースにしてみたんですが,これじゃ分からんという部分が結構出てきて,相当な部分を直したんですよね。
小見山氏:
我々はみんなディスガイアというゲームを知っているので,このチュートリアルで問題ないと思っていました。ところが,デバッグが始まってシリーズを知らない人に遊んでもらったところ,「これどういう意味ですか?」という質問がいろいろと来たんです。
4Gamer:
例えばどんなところが分からないとなるのでしょう?
新川氏:
「持ち上げて投げる」とかですね。例えば移動力が足りずに登れない高台があって,マップに木箱が置いてあったら,木箱を持ち上げて,投げて,足場を作るじゃないですか。
4Gamer:
はい。ディスガイアおなじみの要素ですね。
新川氏:
でも,まず持ち上げて,投げて,足場を作れるというところが伝わっていなくて,木箱をとりあえず殴って壊しちゃうんですよ。それで「先に進めなくなりました」となってしまって。
4Gamer:
ああ,確かにほかのSRPGだと,とりあえず攻撃してみるとかはあるかも……。
新川氏:
そうした,我々が勝手に「分かる」と思い込んでいた部分は,すべて見直しましたので,相当遊びやすくなっていると思います。
4Gamer:
発売を楽しみにしています。
ところで,本作のシナリオも新川さんが書かれたのでしょうか。主人公がゾンビというのは面白い設定です。
新川氏:
はい,私が書いています。今回はいろんな世界を巡る話にしようと考えたのですが,いわゆる“異界転生”はちょっとやり尽くされていますから,「死んでも死んでもあきらめない,熱血主人公」として,主人公をゾンビに設定しました。死ぬたびに違う世界に行くということをひたすら繰り返して,最初はザコのゾンビだった主人公が,破壊神を倒すところまでの成長を描く物語になっていますので,ぜひお楽しみください。
大変な状況でも新作をバンバン作っていく
4Gamer:
ディスガイア6は,コロナ禍での開発になったと思うのですが,影響はありましたか?
新川氏:
在宅勤務などの対応はありましたが,もともと大阪の開発室とやり取りして開発していますから,順調に進められました。
開発体制を見直したことでプラスの面もあって,音声収録のやり方が変わりましたね。今回,収録は出演者を事前のオーディションで選ぶ形にして,すべてリモートで行ったんです。最初からイメージに合う方にお願いしているわけですから,現場で演技指導をする必要がなく,遠隔で済んでしまったので,収録のために岐阜から東京に行く時間を開発に割けました。
もちろん,オーディションをするための準備など,事前の作業は増えるのですが,うちのような地方のメーカーからすると,今のやり方のほうが向いているかもしれません。
4Gamer:
2021年は,日本一ソフトウェアさんにとってどんな年になりそうですか?
新川氏:
コロナ禍で世間のライフスタイルや考え方など,いろいろなものが劇的に変化しました。緊急事態宣言が出て,ここまでの自粛ムードになるとは誰も想像しませんでしたからね。
そうした中で,我々が商売にさせてもらっているゲームは,娯楽です。衣食住に直接関係がなく,なくても死にはしません。何か危機があったときは,真っ先に削られるものです。
しかし,我々としては,ゲームを通して楽しい時間を過ごしていただくことが一番の使命だと改めて感じています。世界的に厳しい状況ではありますが,そこに負けず,これからも新作のゲームをバンバン作っていきます。
4Gamer:
新作ですか。今年のラインナップはまだ出ていませんから,何が発表されるのか楽しみです。
新川氏:
最近はちょっと新規タイトルが多かったので,続編をもっとしっかり作っていくことも考えていて,もしかするとその手のラインナップが増えるかもしれません。
新規も続編もそこそこありますので,これからも変わらず,がんばって作っていきたいですね。
4Gamer:
それでは最後に,ディスガイア6の発売に向け,メッセージをお願いします。
小見山氏:
今回は初心者から経験者の方まで幅広く楽しめるように,バランスを取って作り込みましたので,ぜひ手に取っていただければ嬉しいです。
新川氏:
過去にディスガイアを遊んだことがある方には,かなり遊びごたえを変えたつもりですし,今の皆さんのライフスタイルに合うような機能も充実させましたので,学生時代と違って時間がなかなか取れないという方にも,ぜひ遊んでいただきたいです。
ディスガイアというSRPGを,タイトルは知っていても「時間がかかりそう」「難しそう」という理由で敬遠してきた方もいらっしゃるでしょうが,ディスガイア6でかなり改善したつもりですので,数値が超絶インフレした世界を体験していただきたいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
からの記事と詳細 ( 「魔界戦記ディスガイア6」開発者インタビュー。新鮮な遊びごたえと遊びやすさを両立した最新作に - 4Gamer.net )
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