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Saturday, January 16, 2021

アップルの「HomePod mini」は、“弱点”を補って余りある利便性を備えている:製品レヴュー - WIRED.jp

アップルの小型スマートスピーカー「HomePod mini」の製品レヴューを担当することになったとき、飛び上がって喜んだ。ぜひ自分に担当させてほしいと数週間前から願っていて、できる限りさりげなく、決して相手の機嫌を損ねないようにしながら、編集部内で根回しをしていたのである。

例えば子ども向けの製品であれば、それを使うような年ごろの子の親でなければ、実感をもってレヴューすることは難しい。それと同じで、生粋のアップルファンでなければアップル製品のレヴューなどできるはずがないのだ。幸いにも、自分はそのひとりである。

以前に「HomePod」のレヴュー記事で指摘しているように、アップル製品は必ずしも万人向けではない。「MacBook Pro」でレヴューを書き、「iPhone」でSlackをチェックし、「AirPods」でApple Musicの曲を聴きながら、手首に巻いた「Apple Watch」で毎日の歩数を記録する──。そんな“アップル党”の熱心な党員のみを対象とした製品なのである。

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個人的にも熱烈なアップル製品のファンである。それだけにHomePod miniは、わが家のストリーミング環境を最も円滑に「総アップル化」する手段になると思われた。われらが“スマートホーム”に、すんなりと仲間入りしてくれるだろうと思ったのである。

確かにその通りだった。99ドル(日本では税別10,800円)という価格は、アップルのほかの高価格帯の製品より手ごろなことは間違いない。それに音楽を聴くだけでなく、音声アシスタントの「Siri」に話しかけたり、ほかのデヴァイスのインタラクティヴな操作もできる。

それなのに、何たることか! 音質がいまひとつに感じるのだ。この欠点さえなければ、と天を仰がずにはいられない。

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本体上部にあるタッチ式のディスプレイは色が変化する。PHOTOGRAPH BY APPLE

置き場所を問わず音質を保つ

HomePod miniは高さ3.3インチ(84.3mm)で、本体の上には指で触れたりSiriに呼びかけたりすると光が点滅するフラットなタッチスクリーンが付いている。ただし、持ち運びには向かない。バッテリー内蔵タイプではなく、6フィート(180cm)ほどのUSB-Cケーブルが延びているからだ。

この長さで十分そうに思えたが、ケーブルは抜き差しできないので、置き場所に応じてケーブルをもっと長いものや短いものに交換できない点はやや不便だ。つまり、HomePod miniが家の中における中心的な役割を与えられていないということでもある。その役割は、もっと高価格なHomePodに任されている。

アマゾンの「Amazon Echo Dot」の最新モデルと同様に、HomePod miniはたいていの場所にフィットするソフトボール大の使いやすい小型スピーカーだ。オーディオ機能については、マイクが4つしかないなどややスケールダウンしている点はあるものの、ウーファーとふたつのパッシヴラジエーターを内蔵しており、基本的に上位モデルのHomePodを踏襲している。

HomePod miniには多くの優れたオーディオエンジニアリング技術が採用されているが、アップルの定番カラーであるスペースグレイのメッシュ地に包まれた外観から、その実力をうかがい知ることはできない。実際、HomePod miniのほとんど球に近い形状と小ぢんまりしたサイズ感は、わが家の子ども部屋にある第4世代の「Amazon Echo Dot for Kids」(日本未発売)にそっくりだ。違いは丸いボディにかわいいトラの顔が描かれていない点だけのように見える。

上位モデルのHomePodは、以前のiPhoneで使われていた「A8」プロセッサーを搭載している。これに対してHomePod miniには、「Apple Watch Series 5」「Apple Watch SE」と同じ「S5」チップが採用されている。

4つある内蔵マイクのうち、ひとつは内側を向いている。これは何かを再生している最中であってもスピーカーから流れる音と区別して、ユーザーのコマンドをしっかり聴き取れるようにするためだ。

また、これらのマイクは音の跳ね返りを常に測定している。そのためHomePod miniは、置き場所を問わずクリアで正確な出力を保てるようになっている。これは便利な機能と言えるだろう。この手の小型スピーカーはベッドサイドテーブルやキッチンカウンターに置かれることが多く、どうしても本やサングラスなどの山に埋もれてしまいがちだからだ。

2台あればステレオに

アップルからは今回のレヴュー用に、2台のHomePod miniを借りることになった。置き場所は1台がベッド脇のテーブル、もう1台がキッチンカウンターである。どちらも自然に決まった。

それぞれ個別に別の曲を再生してもいいのだが、HomePodは2台を同じ部屋に置いてステレオスピーカーとして使うこともできる。2台を同時に「Apple TV」に接続し、ステレオサウンドで映画を観ることもできる。

アップル製品はいずれも「アップル大好き人間」たちが使うことを前提につくられている。ちなみに、わたしはまるで海中を泳ぐ人魚のアリエルのように、“アップルの宇宙”を遊泳している人間だ。このためHomePod miniの設定はあっという間に終わったし、2台のスピーカーはわたしの生活にすんなりと溶け込んでいった。

ふとしたはずみに、HomePod miniのさまざまな機能を発見することもよくあった。例えばある日の午後、家族と一緒にドライヴから戻ったときのことだ。家に入ると、子ども向けポッドキャスト「But Why?」を再生中のスマートフォンを、そのまま何気なくHomePod miniの隣に置いた。すると、ポッドキャストの音声がスピーカーから自動的に流れ始めたのである。

また、iPhoneの「ホーム」アプリで「パーソナルリクエスト」機能を有効にしておいたときのことだ。家の中で迷子になったほかのアップル製品を見つけてもらうためだ。愛犬の散歩に出かけたり子どもたちをクルマで送ったりする際に、ブーツを履いてコートを着るために大忙しであっても、iPhoneが音を鳴らして居場所を知らせてくれる。「ヘイ、Siri。iPhoneはどこ?」と叫んで耳を澄ませばいい。

Siriの利便性

Siriは声を驚くほどよく聴き取ってくれる。わが家では夫が仕事から帰ってくると、いきなりイライラするような音が響き渡る。大音響の音楽、コンロの上でソーセージが弾ける音、けたたましく吠えるイヌ、わめき声を上げる子どもたち──。そんななかでもHomePod miniは、「ヘイ、Siri。ストップ!」という叫びを聴き取って、再生中の音楽を止めてくれる。

ウッドデッキに出て、ひよこ豆のスナックをポリポリとつまんで庭を眺めながら、エンリケ・イグレシアスの曲をリクエストしたとしても、Siriはきちんと応えてくれるだろう。ただし、ひとつ断っておかなければならない。HomePod miniのタッチスクリーンの光は、Echo Dotの下部にあるリング状ライトと比べて、やや読み取りにくいのだ。

このため、HomePod miniを高い棚の上には置かないほうがいい。話しかけたときに「聞こえていますよ」と応答してくれているような、あのほっとする光のゆらめきが見えなくなってしまうからだ。

コンテンツを再生する動作は、Apple Musicに加入して「Apple Podcast」でポッドキャストを愛聴しているだけに、少しも難しくなかった。寝室から廊下を挟んで向かいにあるバスルームに移動し、お気に入りのポッドキャスト「Forever35」の最新エピソードを切れ目なく楽しむことなどわけもない。

Apple Musicは音楽の好みを熟知していて、リクエストすると即座にお気に入りのリズ・フェアやエイミー・マンの曲をかけてくれる。HomePod miniではPandoraや「Amazon Music」といったアップル以外の音楽配信サーヴィスも、まもなく利用可能になるはずだ。

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HomePod miniはこれらのデヴァイスすべてと連動する。PHOTOGRAPH BY APPLE

期待外れに感じたサウンド

しかし、これは声を大にして言いたいのだが、サウンドについては期待外れであると感じた。以前の『WIRED』US版のレヴューではHomePodの音質を絶賛しているが、それと同レヴェルの優れたオーディオ性能を期待してしまったのである。

確かにこれほど小さいスピーカーにしては驚くほどの音量が出るし、低音がよく響いて迫力満点だ。ところが高音域となると、歌声ではなく普通の話し声さえ、第4世代のEcho Dotと比べて明らかにぼんやりとだらけて聞こえる。これではわが家のキッチンに置かれたソノスの旧型スピーカーの代わりにはならない。

ポッドキャストを聴いていると、話し手の発する破裂音と子音の摩擦音が気になってしまった。こうした“弱点”のおかげで、いかにマライア・キャリーの歌声が台無しになってしまったかについては触れずにおこう。

“アップルの宇宙”の一員であるかそうでないかの違いは、結婚パーティーを親友だけの集まりにするか、それとも険悪な間柄の人たちも呼ぶかの違いに似ている。手持ちのデヴァイス同士の相性が悪くても問題が起きるとは限らないが、それぞれがうまく連携できていればすべてはずっと簡単にいくはずだ。

行方不明になったiPhoneをAlexaに見つけてもらうことはできる。でも、それはアップルのエンジニアたちに任せたほうがうまくいくに決まっているのだ。

小さな発見による驚きと喜びのときめきを本当に知っているのは、アップル製品にどっぷりとはまっているアップル派の人たちだけである。例えば、瞑想アプリを娘のiPodで再生しながらベッド脇のテーブルに置いたところ、それが近くにあったHomePod miniに自動的に転送されていたことに気づいたときのように。

はっきり言おう。HomePod miniにも欠点はある。だがその欠点を補って余りある、途方もない便利さを備えているのだ。

アップルユーザーには便利な製品

そうは言ってもほかの人たちの前では、もっと手ごろな価格で音質がよく、見た目もほとんど変わらない小型のスマートスピーカーがほかにたくさんあることを認めないわけにはいかない。Alexaや「Google アシスタント」のほうが、Siriよりずっと賢いのだ。

朝食を食べながら、何げなく「カピバラって何?」と尋ねると、Siriはわたしのスマートフォンにウェブ検索の結果を送ってくる。ヘイ、Siri……「それは巨大なネズミの仲間です」って声で教えてくれれば済むはずだ。Alexaならそれができるし、実際そうしてくれる。

それでもアップルユーザーなら、HomePod miniを玄関の近くやベッドサイドテーブルに置いておけば、かなり楽しく便利な毎日が送れるはずだ。

ホームオーディオシステムの中心に据えることはお勧めしないし、確かに値段もAmazon Echo Dotより高い。それでもEcho Dotは、隣にスマートフォンをポンと置くだけで自動的に音楽をスピーカーに切り替えて流してくれたりするだろうか? それはできないはずだ。

アップルユーザー以外の皆さん、グッドラック! わたしはこれからも“アップルランド”の住人を続ける。ここでは何もかもがシームレスで、クロム仕上げの輝きを放っているのだ。

◎WIREDな点
小型で使いやすい。操作が(アップルユーザーにとっては)とても簡単。屋外にいてもSiriはユーザーの声をしっかり聴き取って理解してくれる。面白い機能を次々と繰り出して(アップルユーザーを)驚かせてくれる。重量感のある低音。音量も十分。

△TIREDな点
音のクリアさは期待外れ。すでにほかのアップル製品を所有し、アップルの各種サーヴィスを利用している人に限って言えば、またとない賢い買い物。もっと高性能で安価な製品が他社から発売されている。

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