きっかけはユーザーからの不満の声 偶然出来た“憧れの形”に「使命感に駆られました」
「ユーザーからの不満の声に、ホットケーキは家族分の3〜4枚を分けて焼くことが大変であること、また、何枚も焼いているうちに、最初に焼いたホットケーキが少し冷めてしまうことがありました。試行錯誤を繰り返していたところ、そこでホットケーキを大きく焼いてシェアすれば、皆が同時に焼き立てを食べられるのではないか?と思いつき、フライパンいっぱいに生地を広げた大きなホットケーキを作ることができました。それを見たとき、これはまさに子どもの頃に憧れた絵本に出てきたやつだ! と感動して、お客様にもお届けしなければという使命感に駆られました」(昭和産業 相生さん/以下同)
試作は200回以上… 絵本『しろくまちゃん』『ねずみくん』も読破し、開発のヒントに
「フライパンいっぱいに膨らんだまんまるとした形は、すべての焼き菓子に共通する憧れの形なのではないかと思った」と相生さん。特に、「『ぐりとぐら』では、カステラができあがった後、たくさんの動物たちが分け合って食べている光景がとても幸せそうで素敵ですが、ご家庭でホットケーキを食べるシーンも、このような温かい光景になればと思った」ことも商品開発に挑む大きな要因となったという。
そして「絵本とホットケーキの親和性に気づいた」と語る。
「これまで弊社に寄せられたユーザーの声から、ホットケーキは子どもも料理に参加できるメニューとして愛され、子どもが嬉しそうに食べる笑顔や子どもが親にホットケーキを焼いてくれるシーンなど、“親子の幸せな思い出を作る価値”があることがわかっていました。さらに大人になっても、幼少期の楽しい記憶から、ホットケーキには甘くておいしい食べ物という意識以上に、食べると幸せな気持ちになれるという価値があります。この2つは絵本も同じ。絵本は親と子どもの絆をつなぐアイテムとして“親子の幸せな思い出を作る”とともに、大人になってもお気に入りの一冊があるなど、見ると懐かしい気持ちになれるものではないかと感じました」
企画立案から完成まで約10ヵ月。「コンセプト、商品のイメージを明確に持てたため、非常にスピード感のある開発期間だったと思います」と振り返るが、“絵本でみたあこがれのホットケーキ”の厚みと食感を実現するには苦労もあった。
「従来のホットケーキミックスではフライパンいっぱいに広がる大きなホットケーキを作ると、厚みが出ない、生焼けになりやすい、食感がボソボソで美味しくない、ひっくり返しにくい、焦げてしまうという課題がありました。また、年配の方からお子様までが同じものを分け合うので、食べやすい生地にした方が良いと考え、口溶けの良いスフレのような食感を目指しました。これらをクリアすべく、社内でモニター調査を実施したり、様々なサイズのフライパンを購入して、試作を200回以上繰り返し、時には試作品が黒焦げになったりと苦労もありましたが、納得のいく品質にたどり着きました。こうして、見た目は大きくてもぺろりと食べられるような、ふわふわと軽く、口どけの良いスフレ食感を実現することができました」
パッケージも絵本らしさ追求し“イラスト化” 本棚に空き箱を飾る人も
「木版画絵本作家の彦坂木版工房にお願いし、イラストを制作していただきました。本商品は、“絵本で見たあこがれのホットケーキ”を食べてみたいと思う子どもから大人までの全世代を対象にしていますので、子どもっぽくなり過ぎず、王道感のある飽きのこないデザインで、新商品なのに昔からあるような懐かしさを感じられるようこだわりました。絵本らしさとおいしさ、幸福感が存分に伝わるイラストになったと思います」
「本棚に、絵本と一緒にパッケージを飾った写真をあげているSNSを拝見し、とても感動しました」と相生さん。予想を上回る大きな反響を受け、同社ではパンミックスやお好み焼き粉など、コロナ禍で需要の増した粉ものを多く発売しているだけに、「“親子の幸せな思い出を作る”という価値に特化した商品が開発できれば、シリーズ化も検討したい」と意欲を見せる。
ちなみに『まんまるおおきなホットケーキのもと』のおすすめのおいしい食べ方を聞いてみると……。
「バターにシロップをたっぷりかける王道の食べ方に加え、スフレ風のふわふわ食感が冷めても続くため、ショートケーキのようにホイップクリームやフルーツなどでデコレーションしていただいても簡単に美味しくお召し上がりいただけます。ホットケーキ自体の甘さは控えめにしているので、ホイップクリームやシロップをたくさんかけて、甘い気分を存分に楽しんでいただきたいです」
自粛が続く今年のゴールデンウィーク、子どもと一緒に、あるいは子どもの頃を懐かしんで、憧れのホットケーキとともに絵本の世界に浸ってみてはいかがだろう?
(文/河上いつ子)
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