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Wednesday, May 19, 2021

海藻食べ尽くす厄介者をおいしい食材に 「ウニノミクス」の挑戦 - 日経ビジネスオンライン

 岩場に張り付いた大量のウニ。わかめなどの海藻をウニが食べ尽くし、藻場が消えてしまう「磯焼け」が世界の海で問題となっている。産卵する魚や甲殻類も多い藻場は海のゆりかごであるだけではなく、二酸化炭素(CO2)を吸収する役割もある。

 こうした磯焼けの原因となるウニを買い取って陸上で成長させ、おいしい食材へと育てるのがウニノミクス(東京・江東)だ。

ウニなどによる磯焼けは「海の砂漠化」ともいわれ生物の減少など深刻な問題になっている(写真:アフロ)

 厄介なのが、こうした磯焼けの現場で張り付いたウニを割っても、すし屋に並ぶような鮮やかなだいだい色をした食材にはならない点だ。茶色がかった身が漏れ出るだけのウニを取っても漁師の収入にならず、痩せたウニが放置されるためにさらにウニが増えてしまう悪循環にある。政府や自治体は磯焼け対策の補助金を使い、漁師やダイバーがウニの駆除を担う事例もあるが、大半は廃棄される。

 ウニノミクスはノルウェーの水産研究所で開発した技術を使い、独自の餌をウニに食べさせる。同社の財務・戦略責任者である石田晋太郎氏は「これまで廃棄されていたウニを育てて販売すれば、漁師の収入が安定し地域の特産品にもなる」と話す。痩せたウニを陸上にある工場内で育て、適切な餌、徹底的な温度管理をすることで約2~3カ月後には中身の詰まったおいしいウニへと変身させる。

磯焼けの原因となったウニも、ウニノミクスの工場で育てると2カ月後にはおいしい食材になる

 ウニノミクスの妙味は、色、味、効率性を追求したこの究極のウニの量産技術にある。岩場に張り付いたウニを、陸にある専用施設に移すことで育てていく。

大分県国東市の漁業者と大分うにファーム(大分県国東市)を立ち上げ、ムラサキウニを陸上で育てる

 ウニは「ごみでも何でも食べてしまう」(石田氏)生物だという。ウニノミクスではウニ本来の味を引き出すために、昆布の栄養成分を凝縮した人工飼料を食べさせる。餌は溶けづらく加工することで適度に身を太らせることができるという。餌のテストだけで数十回も実施している。

 ウニを育てるのは専用の水槽だ。魚は泳ぎ回ることで密集を避けるが、ウニは動かない。水槽内は最適な水温に調整され、濾過装置とも組み合わせている。密集し過ぎないように適度な距離を保つことで、餌を食べやすいように工夫を凝らす。

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