農作物を食い荒らし、農家を悩ませるイノシシの肉を活用した「甘くないパウンドケーキ」を、松江市の総菜会社が発案した。畑違いのスイーツづくりへ挑んだ原動力とは――。(門脇統悟)
会社は、米飯中心の総菜製造・卸を本業とする「エス・ビーフーズ」(松江市嫁島町)。1991年7月に設立された従業員約40人の中小企業だ。「ここ数年、県内にも大手の企業が入ってきて、うちのような小さな会社では価格競争で太刀打ちできない状況だった」と、業務課長の松浦孝則さん(54)は言う。
「何か新しいチャレンジはできないか」。打開策に思いを巡らせる中で、「いつかかなえたい」と胸に秘めてきた夢と向き合うことになる。それが、菓子製造だった。
「総菜は朝昼晩の食卓にしか上がらない。お菓子やスイーツには時間の制限がなく、ハロウィーンでもクリスマスでも、バレンタインでも、お菓子が出てくるとみんな笑顔になり、そこに幸せな空間が生まれる」
きっかけは、ネットゲームで知り合った東京・西麻布にあるイタリアンレストランのシェフとの会話だった。「お菓子作りの基本が詰まっているパウンドケーキを作れるようになれば、クッキーやタルトも出来るようになる」と助言を受け、2022年春にレストランと監修契約を結んだ。
菓子作りに興味を持つ調理室長の小原迅人(はやと)さん(32)を派遣し、自身も週1回、オンラインでレクチャーを受けた。目指したのは、フランス語で「塩味のケーキ」を意味する「ケークサレ」。現地では、フルコースの前菜や酒のおつまみとして親しまれるスイーツの一つだ。
商品開発は、まつえ農水商工連携事業を活用した。八雲猪肉生産組合の三島商店から取り寄せたイノシシ肉を角煮にし、ネギやブロッコリー、バター、チーズを入れて焼き上げた。松浦さんは「スイーツは何かの配分がちょっと違っても、別のものになってしまうので、温度調整や焼き方が難しくて苦戦した。シェフのGOサインが出るまでに1年かかった」と振り返る。
総菜販売の傍ら、パウンドケーキ専門のネットショップ「Pino(ピーノ)」を設立し、23年8月から「イノシシ肉のケークサレ」として1本2160円(税込み)で販売する。松浦さんは「シェフとの出会いがなければ商品として形にできなかった。人との縁を大切に、これからも山陰の魅力を全国に発信できるような商品開発を続けていきたい」と意気込む。
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