消費税増税や大型台風の直撃など、2019年は日本経済に影響を及ぼす出来事が多かった。そうした中、増税に伴う政府の補助事業でキャッシュレス化が推進され、それを機にキャッシュレス対応をした中小店舗も多い。今回取材した東京・三鷹市のケーキ店「ル リス」もそうした店の1つだ。
売り上げの半分がキャッシュレス決済になった月も
井の頭公園にほど近い場所に構えるル リスは2010年1月に創業し、10周年を迎えたばかりの地元の人気店。客層は基本的に地元の人たちで、商圏は三鷹市や隣接する調布市などが主体。都内だが戸建ての多いエリアであり、年齢層高めで生活にゆとりのある人が多い。マンション建設も続いていて子育て世代も増え、年齢層が幅広いエリアでもある。
これまでは現金決済だった同店だが、2019年8月からmPOSの「Airレジ」とキャッシュレス決済の「Airペイ」を導入した。代表のによれば、実はそれまで、クレジットカードなどのキャッシュレス決済の問い合わせはほとんどなかったという。そのため、キャッシュレス対応について特段の必要性を感じていなかったという同氏だが、契機となったのは消費税増税だ。
ル リスは、持ち帰りが基本のケーキ店であり、増税後も軽減税率によって消費税率は8%のままだ。しかし、一部10%となる商品もあって、税率が混在することになった。ところが、同店のレジは昔ながらのキャッシュレジスターで、複数の税率を設定できなかったそうだ。
そのため、レジの更新が必要となり、同時に政府の補助金が利用できることから、それを機にキャッシュレス対応を含めた検討を開始。同業者などからの勧めもあって検討したAirレジは、月額料金も掛からない点が決め手となって導入を決めたという。実際の稼働は2019年8月終盤からだった。
もともと現金決済のみだったため、当初はキャッシュレス決済の利用はなかったそうだが、10月に入って実際の増税が始まると、一気に利用が拡大した。増税によってキャッシュレス決済の話題が増えたこともあるが、同店がキャッシュレス・消費者還元事業による5%還元の対象店というのが大きい、というのが須山氏の推測だ。
その結果、10月は最大で1日の売り上げの半分がキャッシュレス決済になったほど。売り上げが1年で最大となるクリスマスシーズンでも、3分の1以上がキャッシュレスで決済したそうだ。比率としてはクレジットカードがほとんどで、PayPay、LINE Pay、Alipayのコード決済にも対応しているが、利用はわずかだという。
手ぶらで訪れる人が増えた
同店の客単価は2000〜3000円ほど。ケーキに加えてお菓子のギフト需要も多く、こちらは1500〜2000円が多い。業務の手みやげ需要もあり、そうした場合は3000円を超える単価になるという。クレジットカードが多い理由は、このあたりの単価に理由がありそうだ。比率もそれなりに高く、キャッシュレス比率は平均して3〜4割に達しているという。1日の客数は50〜60人程度だが、「夏と冬で客数の差が大きい」のがケーキ店の特徴でもある。夏はとにかくケーキは売れないそうで、キャッシュレス化による影響は未知数だ。
キャッシュレス決済によって1回の買い物における単価が増えるといった購買行動の変化はあまり感じられていないそうだが、「手ぶらで訪れる人が増えた」という印象があるという。
隣接する井の頭公園や、徒歩十数分の吉祥寺駅周辺へ散歩に行く人が、手ぶらでフラッと店に寄ることが増えているというのが、新しい動きとしてみられるという。「特別なときのケーキを買おう」という意識で来ているわけではないので、客単価自体は低めだが、今まで、きちんと現金を持って訪れるような場所だったケーキ店が、手元に現金がなくてもカードがあれば気軽に立ち寄って購入できる店になった、というわけだ。電子マネーやコード決済にも対応するため、今後「スマートフォンだけ持ってケーキを買いに来る」という例も増えそうだ。
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若い人はmPOSの操作を簡単に覚える
売り上げ面だけでなく、キャッシュレス決済対応でレジ締め時の手間が減少したというメリットもあった。特に現金の打ち間違いなどによる過不足が「劇的に減った」(須山氏)というほど。おつりを間違えて追いかけるなどといったミスも、キャッシュレス決済では発生しないため、全体で手間が減少して、会計がスムーズになったそうだ。
mPOSの操作性に関しては、須山氏自身が「こうしたものに慣れていない」ために戸惑いもあったそうだが、アルバイトの学生や若い人は1日で使い方を覚えてスムーズだったという。物理的な数字キーを押すこれまでのキャッシュレジスターと比べて、大きな支障はなく、使い方の心配はないそうだ。
「売り上げデータの見える化」が可能に
須山氏が付き合いのあるケーキ店でも、消費税増税に合わせてキャッシュレス対応した店が増えているという。ただ、手数料の問題があって非対応の店もあるそうで、その背景には、ケーキ店の利益率の問題がある。須山氏によれば、ケーキ店の利益率は10%程度。そこに決済手数料が数%掛かると利益への影響が大きい。
キャッシュレス対応では、その手数料を超えるメリットが必要となる。須山氏もそれを不安に思いながら対応を開始したというが、「対応によって思った以上にクレジットカードを使う人が多かった」。これまでの動きから、売り上げアップが期待できると考えるようになったそうだ。
もう1つのメリットとして期待しているのが、売り上げデータの見える化だ。導入以前は「感覚的」に見ていた売り上げデータが、mPOS導入によって日々の集計データがグラフィカルに確認できるようになるため、客単価や売れ筋商品の統計が今後の営業の参考になる。
こうした情報によって、特に仕入れがより計画的にできると見込んでいるそうだ。ケーキ業界における昨今の課題の1つが原材料の値上げで、特にバニラビーンズは「10倍ぐらいになって、1kgあたり1万円が10万円以上になった」という。現状はル リスでも天然のバニラ自体ではなく、その加工品を使用しているそうだ。
こうした原材料の値上げの影響を減らすためにも、仕入れを効率化することは重要で、売り上げを見える化できるmPOSの効果を期待していると須山氏は言う。
もともと軽減税率の対象となる持ち帰りの食品を販売するケーキ店であるル リスは、消費税増税の影響はそれほど感じていないという。それに対し、補助金による初期費用の補助があり、mPOSを導入できた点はいいきっかけになったようだ。現時点で、数字上の明確なメリットは見えていおらず、長期的な視点での分析が必要といえそうだ。
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手数料を超えるメリットはある? ケーキ店「ル リス」がキャッシュレス対応した結果 - ITmedia
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