宮口幸治氏
京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に入社。退職後、神戸大学医学部を経て児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務。2016年より立命館大学産業社会学部教授。著書の『ケーキの切れない非行少年たち』は2020年間新書ベストセラーランキングで1位。『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』と合わせて80万部を超えるヒットとなっている(写真:宮田昌彦、以下同)
ロングセラーとなっている『ケーキの切れない非行少年たち』で、学校教育では認知機能についての取り組みが抜け落ちている、と指摘しています。
宮口幸治氏(以下、宮口氏):勉強には土台となる基礎的な認知機能が欠かせない。認知機能が弱いと、短い文章の復唱や簡単な図を写すことなどができない。すると子どもは学校の勉強についていけなくなる。勉強が嫌いになるだけでなく、自信の喪失や怠学につながり、非行化することもある。私は特に手がかかるといわれる発達障害や知的障害を持った非行少年が収容される医療少年院に10年以上勤務し、そうした少年をずっと見てきた。
学校教育は歴史的に教科学習から始まっており、認知機能に着目した指導という発想がそもそもない。このため、勉強ができない子どもに対しての教育は「勉強をいかに教えるか」ばかりが注目されており、「勉強の土台にある認知機能に弱さがあるのではないか」という視点がこれまでの教育課程にはなかった。
この点に気づいたのが、医療少年院の少年たちが「あまりにも勉強ができない」という状況に直面したからだ。神経心理学に基づく検査をしてみると、勉強ができないという以前にもっと基礎的なこと、例えば短い言葉を聞き取ったり、簡単な図を写したり、といったことができないと分かり、問題は勉強以前なのだと分かった。
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